国土交通省 国土技術政策総合研究所、国立研究開発法人 建築研究所

6. 昇降機の評価方法

昇降機の一次エネルギー消費量算出ロジックを示す。

6.1 はじめに

6.1.1 適用範囲

計算の対象とする昇降機は次の通りである。

  1. トラクションタイプのロープ式乗用エレベータ

    • 人荷用エレベータ、非常用エレベータ、主動線にないエレベータも評価の対象とする。

    • 定員が定められているエレベータは原則として評価の対象とする。例えば、病院向けの寝台用エレベータは定員が定められるため、評価の対象とする。

次に示す昇降機は対象とはしない。

  1. 巻胴式、油圧式、リニアモーター式等の種々の駆動方式のエレベータ

  2. 小荷物専用昇降機や荷物用エレベータ、自動車用エレベータ、共同住宅で見られる地上階と屋内の駐輪場置場をつなぐエレベータ(自転車等の運搬を目的としたエレベータ)など、荷物の運搬を目的とした昇降機

  3. 工場等の生産エリアにおいて、物品の製造や運搬のために専用で利用する人荷用エレベータ(生 産に従事する作業員が生産物品を台車で上下階に運ぶために専用で利用するトラクションタイプ のロープ式エレベータ等)

  4. エスカレーター

  5. いす式階段昇降機、段差解消機

6.1.2 用語の定義

  1. 昇降機
     一定の昇降路、経路その他これに類する部分を介して、動力を用いて人または物を建築物のある階またはある部分から他の階または他の部分へ移動・運搬するための設備。

  2. 昇降機系統
     一体として制御される昇降機群のことをいう。複数の昇降機で構成される場合もあれば、1台で系統が構成される場合もある。

  3. 積載質量
     かごに乗り込む利用者及び搭載する荷物などの自重により生ずるかごの定格質量。

  4. 定格速度
     かごが上昇、下降するときの毎分の定格速度。

  5. 速度制御方式による補正係数
     消費電力量を求めるための係数。消費電力は制御方式毎にエレベータの積載質量、速度、起動頻度に比例している。これらより各々の制御方式毎に導き出した換算係数。

6.1.3 入出力

本章全体における入力、出力は下表の通りである。

表 1. 入力
変数名 説明 単位 入力シート

\(CtrlType_{EV,i}\)

昇降機系統iの速度制御方式の種類

-

様式6:⑦速度制御方式

\(BuildingType\)

建物用途

-

様式6:①建物用途・室用途

\(RoomType_{i}\)

室iの室用途

-

様式6:①建物用途・室用途

\(L_{EV,i}\)

昇降機系統iの積載質量

kg

様式6:④積載量

\(V_{EV,i}\)

昇降機系統iの定格速度

m/min

様式6:⑤速度

\(N_{EV,i}\)

昇降機系統iに属する昇降機の数

様式6:③台数

表 2. 出力
変数名 説明 単位

\(E_{EV}\)

昇降機の設計一次エネルギー消費量

MJ/年

6.2 速度制御方式に応じて定められる係数

昇降機の速度制御方式に応じて定められる効果係数を算出する。

表 3. 入力
変数名 説明 単位 参照先

\(CtrlType_{EV,i}\)

昇降機系統iの速度制御方式の種類

-

様式6:⑦速度制御方式

表 4. 出力
変数名 説明 単位 参照元

\(C_{EV,i}\)

昇降機系統iの速度制御方式によって定められる係数

-

6.3

表 5. 制御方式によって定められる係数
速度制御方式の種類 \(CtrlType_{EV,i}\) 係数の値 \(C_{EV,i}\)

可変電圧可変周波数制御方式(電力回生ありかつギアレス巻上機)

1/50

可変電圧可変周波数制御方式(電力回生あり)

1/45

可変電圧可変周波数制御方式(電力回生なしかつギアレス巻上機)

1/45

可変電圧可変周波数制御方式(電力回生なし)

1/40

交流帰還制御方式

1/20

なお、速度制御方式の種類が指定されていない(入力シートの当該欄が空欄である)場合は「交流帰還制御方式」が選択されたものとする。

6.3 昇降機系統の年間運転時間

昇降機系統の年間運転時間を算出する。

表 6. 入力
変数名 説明 単位 参照先

\(BuildingType\)

建物用途

-

様式6:①建物用途・室用途

\(RoomType_{i}\)

昇降機系統iが対象とする主要な室の用途

-

様式6:①建物用途・室用途

表 7. 出力
変数名 説明 単位 参照元

\(T_{EV,i}\)

昇降機系統iの年間運転時間

時間

6.4

昇降機系統iの年間運転時間は、照明設備の年間点灯時間と等しいとする。 照明設備の年間点灯時間は標準室使用条件で室用途毎に定められている。 各室用途の照明設備の年間点灯時間は「ROOM_SPEC.csv」、 このファイルを使用する際に必要となる検索キーは「ROOM_NAME.csv」で規定されている。

  • データベースの検索キーを取得する。

建物用途 \(BuildingType\) と室用途 \(RoomType_i\) を用いて、ROOM_NAME.csvより検索キーを取得する。

例)建物用途が「事務所等」で室用途が「事務室」の場合、検索キーは「O-1」となる。

  • 照明設備の年間点灯時間を取得する。

検索キーを用いて、ROOM_SPEC.csvより照明設備の年間点灯時間を取得する。

例)検索キーが「O-1」の場合、照明設備の年間点灯時間(列名は「年間照明点灯時間」)は「3133」となる。

6.4 昇降機系統の年間電力消費量

昇降機系統ごとの年間電力消費量を算出する。

表 8. 入力
変数名 説明 単位 参照先

\(N_{EV,i}\)

昇降機系統iに属する昇降機の数

様式6:③台数

\(L_{EV,i}\)

昇降機系統iの積載質量

kg

様式6:④積載量

\(V_{EV,i}\)

昇降機系統iの定格速度

m/min

様式6:⑤速度

\(C_{EV,i}\)

昇降機系統iの速度制御方式によって定められる係数

-

6.2

\(T_{EV,i}\)

昇降機系統iの年間運転時間

時間

6.3

表 9. 出力
変数名 説明 単位 参照元

\(E_{EV,i}\)

昇降機系統iの年間電力消費量

kWh/年

6.5

昇降機系統iの年間電力消費量 \(E_{EV,i}\) [kWh/年]は次式により算出する。

\[E_{EV,i} = \frac{ L_{EV,i} \times V_{EV,i} \times C_{EV,i} \times T_{EV,i} \times N_{EV,i} }{860}\]

6.5 昇降機の設計一次エネルギー消費量

昇降機の年間一次エネルギー消費量 \(E_{EV}\) [MJ/年]を算出する。

表 10. 入力
変数名 説明 単位 参照先

\(E_{EV,i}\)

昇降機系統iの年間電力消費量

kWh/年

6.4

表 11. 出力
変数名 説明 単位 参照元

\(E_{EV}\)

昇降機の設計一次エネルギー消費量

MJ/年

-

昇降機の年間一次エネルギー消費量 \(E_{EV}\) [MJ/年]は次式により算出する。 なお、\(f_{prim,e}\) は電気の量1キロワット時を熱量に換算する係数である。

\[E_{EV} = \sum_{i=1} (E_{EV,i}) \times f_{prim,e} \times 10^{-3}\]